こんにちは ミアです。日本の桜は今では観光客に大人気になりました。ニッポンの桜はきれいですよね、ええ、ニッポンの。
しかしここで一言物申したい! 日本の桜がすごいというよりは、桜など四季折々の自然風土の表情を歌に詠んできた古人達の感性がすごいんですよ。
我らが誇りたいのは桜そのものだけじゃなく、桜を大切にしてきた奥深き心ですよね。
ではその世界観を桜の呼び名から探ってみませんか。前回の梅に引きつづき、桜の異名や言いまわしを「茶の湯の銘 大百科」から集めてみました。

花の雨。箱根にて
朝桜(あさざくら):
朝、露をおびて咲く清らかな桜のこと。
早起きした朝はこちらも清々しい気分ですから、桜の花がより一層美しく見えることでしょう。若かりし頃に終電を逃すまで飲んだ翌日の「朝帰り」とは真逆な爽快感であります。
糸桜(いとざくら):
枝垂桜のこと。細い枝に可憐な淡紅色の単衣の花が見事に枝垂れる姿は桜の中でも最も優美。
枝垂桜はミステリアスで美しいですよね。ミステリアスさが美しさにプラスされると右に出るものなし!
薄桜(うすざくら):
桜の花の色のうすいもの。
和の色の一つです。個人的なつぶやきですがこんな色の着物が欲しいです。
雲珠桜(うずざくら):
①京都の鞍馬山に咲く桜の総称。馬具である雲珠を地名の鞍馬にかけていう。②サトザクラの一種。花は紅色で重弁。
まず雲珠をご存知ですか? 馬に付ける鞍がありますよね、鞍よりしっぽの方向にちょうど馬の腰の上あたりに乗っける装飾品です。だから地名の鞍馬とかかるわけですね。
うば桜(うばざくら):
①老女に歯がないところから、歯より先に花を開く桜をいう。ヒガンザクラの一種。②若さの盛りを過ぎても、なお美しさが残っている女性。
姥口釜なんてのが茶の湯にも登場しますが、ワタシのお茶の先生は「姥口なんて名前を付けたら現代ではセクハラになってしまう」と生徒の笑いを誘っていたことを思い出しました。余談でした。
遅桜(おそざくら):
桜花の咲く時期に遅れて咲く桜のことをいう。品種によって遅速はあるが、それに限らず、遅く咲く桜全般をいう。「夏山の青葉まじりの遅ざくら初花よりもめつらしきかな」(『金葉集』)巻二夏歌藤原盛房)。
季節の始めに咲く桜や、満開の頃に咲く桜、遅い頃に咲く桜、どれもそれぞれ良いということですな。
かざし草(かざしぐさ):
サクラの異名。
ももしきの大宮人はいとまあれや桜かざして今日も暮らしつ(新古今和歌集)
宮中の人たちは暇さえあれば桜をかざして過ごしているわぁという意味合いの詩だと思うのですが、桜を愛でる時間的余裕を持つ人を批判しているように聞こえます。
桜狩り(さくらがり):
桜花をたずね求めて楽しむこと。花巡り・桜人・桜見・観桜。もとは観桜しながら行った鷹狩りを指した。
桜を見ながら鷹を狩るなんて好きな人にはたまらない遊びだと思うんです。しかしもう日本ではできませんね。猛禽類は日本では狩ってはならぬことになっているらしいです。……紅葉狩りの狩りもこの風習から来てるのかなあ? どなたか知っていたら教えてください。
桜衣(さくらごろも):
①桜襲の衣。②桜の咲く頃に着る春着。
「春らしい装い」にこんなに粋で的確な単語があったとは! 調べたところ、桜の季節にちなんで着る十二単の色合わせにも厳しいルールがあるんですってね。
桜人(さくらびと):
花見を楽しむ人。桜の花を愛でる人。
そうです、そこのあなたのことです。
残花(ざんか):
散り残った花。特に、桜の花についていう。残る花。遅れて咲く花。残英。
遅桜と残花との区別は、花期の遅い桜と、花期は遅くはないが、枝に散り残っている花との別である。(日本大歳時記)
晩春の季語です。なんかちょっと孤独な雰囲気を漂わせています。ジャンヌダルクを連想するのはワタシだけかしら。
初桜(はつざくら):
その春に初めて咲く桜の花のこと。また、咲いて間もない桜のこともいう。……一般には彼岸桜が一番。初花は花をもつ心の現れである。
今も昔も季節の早取りほどクールなことってないみたいですね。
花篝(はなかがり):
夜桜を見るためにたく篝火のこと。
大変っ、火事にならないようにしないと!
花霞(はながすみ):
花といえば桜をさすことが多いが、その満開の花が霞のように見えるという情景と桜の花に霞がたなびいてうす曇りの空と渾然となっている情景もさす。
少し遠くから見た桜の情景だと思いますが、視力が落ちて近くの桜も霞んで見えてしまう今日この頃です。
花くらべ(はなくらべ):
桜の花の枝などで打ち合って争う遊びを花いくさ。左右二組に分かれ、花(主として桜)を持ち寄ってその優劣を競い合い、和歌などを詠んだ遊びを「花合わせ」「花比べ」という。
もしも昔ホワイトデーがあったなら、きっと男性陣は美しい桜の枝を競ってプレゼントするのか、とか妄想したりする。(下記へ続く)
花盗人(はなぬすびと):
花を愛でるために花を折り盗む人。はなどろぼう。
(上記から続く)……美しい女性には泥棒までして花をプレゼントしてくる人が出現するというオチ。
花の雨(はなのあめ):
桜の花に降りかかる雨。また、桜の咲くころに降る雨。
雨が降ると散る時期が早まってしまうよーと心配する心理は今も昔もきっとあったと思うんです。
花の宴(はなのうたげ):
桜の下で花見をしながら宴を催す。桜の花が咲き始めて満開になり、そして散るのはほんの十日位。その短い期間内に桜花爛漫の下での酒盛、または花見弁当。古くは梅が花であったが、平安時代、天皇のとき左近の桜が植えられてから、観桜のうたげがしきりに模様されたという。
その風習は立派に今でも続いています。
花の袖(はなのそで):
①桜色に染めた袖。花染めの袖。②美しい袖。特に、花見の時に着る女の晴れ着の袖。③花を衣の袖にたとえた言葉。
こういう桜衣が欲しいねん。
花の友(はなのとも):
花をたずねる友。花見の友のこと。
友情にも色々種類がある中、花の友と言ったら本当に近しい、あるいは近しくなりたい間柄の人ということになりますでしょうか。いづれも素敵です。
花の幕(はなのまく):
花見の宴の時に張りまわす幕。花見幕。
花白雲(はなはくうん):
桜の花が遠くから見るとまるで白雲のように見える情景。
花霞と比べると立体的な迫力を感じます。
花冷え(はなびえ):
桜が咲く頃は天気が変わりやすい。暖かいかと思えば急に薄ら寒くなり、花が咲きとどまったり、散り際を早めたりする。花どきには此の気温差が人々を戸惑わせる。これも陽気な花の季節の意外な現象。
花見の季節は大概まだ寒いんだ。
花日和(はなびより):
花見をするのに適しているおだやかな日和をいう。
ぽかぽかの小春日和にのんびり花見ができたらいいですね。ですがそんな日もつかの間、花冷えというくらいですから。
花吹雪(はなふぶき):
桜の花の咲きはじめから散るまでの期間は短い。その散る花の絢爛たるさまを表現した言葉。空をゆくひとかたまりの花吹雪。地に降っては花毛氈となり、水面なら散り敷いて流れる花びらは花筏。その美しさはやはり日本人の心を捉え、一千年の歴史を伝えてきた情趣。落花にはそのちる潔さに花を惜しむ格別の思いが込められている。
こんな散り際の一瞬を捉えた言葉ってあります?! 美しすぎる……
以上、桜にまつわる言い回しでした。

ミアタケ
2年4ヶ月に及び、みそ汁をふるまう世界一周旅行をする。味噌に感化され和の文化が好きに。帰国後30歳からミア流和式花嫁修業に精を出す。
さまよいがちにグローバル化する現代ニッポンの産物であり、博愛主義の愛国者と自分自身を分析する。
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